長期にわたる影響を与えてきた戦後二国間交流

ダイアン・ロドリゲス・キイノ

1950年代後半、アーラム大学の歴史学の教授であるジャクソン・ベイリーが、アーラム大学の留学に関する取り組みを強化するため、外交活動に乗り出しました。ハーバード大学で日本史の博士号を取得したばかりのベイリーは、かつての指導教官に早稲田大学の紹介を依頼しました。それから半世紀以上が経ち、まさにこの依頼が日米の何千人もの学生に、人生を変えるほどの影響を与えました。

1963年の正式な立ち上げ以来、ジャパンスタディは、活発な学術・文化交流プログラムとなり、グレート・レイクス・カレッジ・アソシエーション(GLCA)やアソシエ―テッド・カレッジ・オブ・ミッドウェスト(ACM)の加盟校の学部生に、東京の早稲田大学で学び、生活する機会を提供しています(Great Lakes Colleges Association 2021)。同様に、有名で、厳しい学生選抜を行う機関の早稲田大学は、GLCAまたはACMのいずれかのキャンパスに学生を派遣しています。

この二国間の関係は、イノベーション、熱意、そして世界市民としての責任を果たすことなどが原動力となっており、他にはないものです。GLCAとACMは一体となって、米国北中西部地域にある30近くの小規模なリベラルアーツカレッジと大学のコンソーシアムを形成しています。GLCAとACMのカレッジには、それぞれ約1300人の学生が在籍しています。これとは対照的に、早稲田大学は5つのサテライトキャンパスを持ち、約5万人の学生が在籍する首都圏の大規模研究機関です。このようにはっきりとした目的のある双方向型の交流に参加することで、日本とアメリカの学生は、学術的、社会的、言語的なコンフォートゾーンから抜け出し、外国の環境で問題解決や柔軟性を体験することができます。

これまでにジャパンスタディでは、およそ3600人のアメリカ人学生と日本人学生を、それぞれ東京とアメリカで受け入れてきました(Japan Study Alumni Newsletter 2019)。プログラムの本部はアーラム大学に置かれていますが、GLCAとACMは厳格なプログラム審査プロセスを実施しています。この客観的な評価により、GLCAとACMのコンソーシアムと早稲田大学は、ジャパンスタディを承認し、自信を持って学生を海外に送り出すことができます。アメリカの学生は、海外経験の資金を賄うために、学資援助や奨学金、家族の資金などを利用します。しかし、日本の学生がアメリカで学費の差に直面するため(つまり、日本の方が高等教育のコストが著しく低い)、GLCAとACMの全キャンパスでは、早稲田大学から派遣されるジャパンスタディの留学生に対して50%の学費免除を提供しています。

アメリカ人学生に関しては、ジャパンスタディは言語学習に重点を置いており、早稲田の日本語教育研究センター(CJL)で日本語の単位を6単位履修することを求めています。また、早稲田の長い伝統のある国際教養学部(SILS)が提供する選択科目も受講します。かつての早稲田の国際部プログラムを前身とするSILSは、2004年に国内外の学生に英語で学士号を提供するために設立されました。そのため、ジャパンスタディは、語学力の向上に加えて、異文化コミュニケーション能力を強化し、日本の文化・社会・歴史の理解を深め、それぞれのキャリアに対する野心を磨く支援を行うことを目指しています。

これらの目標を達成するために、アメリカ人学生はキャンパス近くの現地の家族と住み、公共交通機関を利用して早稲田大学に通いますが、その費用はジャパンスタディが賄います。また、アメリカ人留学生は、キャンパスのクラブや団体に関わったり、週末の気分転換や日帰り旅行に参加したり、東京以外の場所で4週間の文化インターンシップを経験したりして、言語や文化の習得能力を高めています。大阪で動物を保護したり、岡山で禅僧体験をして学んだり、岩手の地元工場で働いたりと、五大湖の全流域から集まったアメリカ人学生は、日本の田舎の自然の美しさを体験します。

Photo collage of three photos. One: A group of students posing in front of a statue. Two: Three women smiling wearing kimonos. Three: Students at a tea ceremony.

日本研究。 2021年。​​​​

日本人学生はアメリカで、重なる部分もありますが、異なる形でジャパンスタディを体験します。早稲田大学の学生は、中西部の受け入れ校で提供されている幅広いコースのメニューを履修し、多くの場合、英語でのライティングプロジェクトを支援する相談員が付き添います(Japan Study 2021)。GLCAとACMの加盟校は、一緒に取り組める様々な学術・社会活動を主催する全寮制のカレッジであるため、学生はキャンパス内の寮で生活します。キャンパスに慣れてくると、感謝祭や新年などの伝統的な祝日をクラスメートの家族と一緒に過ごしたり、シカゴやニューヨークなどの有名な近郊都市を個人で散策したりすることが多くなります。また、日本人学生は、GLCAやACMのキャンパスで提供されている数多くの奉仕活動や体験学習の機会に参加することもあるかもしれません。

学生にグローバルな機会を提供するために、あらゆる関係者を巻き込み、GLCAとACMのコンソーシアムの力を活用することの重要性は計り知れません。例えば、GLCA・ACMキャンパスと早稲田大学の教員は、専門的な能力開発や海外での教育機会を追求するよう奨励されています。さらに、GLCAとACMの加盟機関は、それぞれの取り組みの中で、全大学を代表してリーダーシップと責任を負います。選ばれたキャンパスは「エージェント」に認定され、高等教育におけるグローバル化の目標を前進させる一定の義務を果たすことが期待されています。

エージェント・カレッジになると、海外プログラムの管理、学生や教員の募集・選抜、ビザや交通手段の手配などを行うことになりました。このモデルは、一様にそうといえるわけではありませんが、非常に持続可能であり、成功を収めていることが明らかになっています。このモデルには最も優れた教員が必要であり、時が来れば新たな最優秀教員が引き継ぐことになります。これを成功させるためには、学部長や学長もこのような国際教育に対する責任を果たす必要があります。(Japan Study 2021)

60周年を迎えたジャパンスタディのような長続きするパートナーシップは、高等教育の発展と世界市民の育成の基礎であるため、これを称えることは重要です。このような国際的提携関係構築の精神に基づき、ジャパンスタディは、海外での経験を学部教育の枠を超えて拡張し、ジャパンスタディの意義を増幅させるため、同窓会ネットワークを立ち上げました(Asada 2019)。ジャパンスタディ・アラムナイ・ネットワークは、過小評価されている学部生の募集と支援に重点を置き、他ではこれほど深く日本文化や日本社会を体験できなかったかもしれない有色人種の学生や低所得の大学生に対して扉を開いてきました。半世紀前に制度設計されたこの二国間協定は、直接体験できる文化交流を通じて学生の世界観を広げることで、長期にわたる影響を与えてきたのです。


参考文献

浅田サラR. 2019年。米国留学50年:アジアとその先への玄関口としての日本。 イギリス:テイラーアンドフランシス。

五大湖大学協会。 2021年。「日本研究」。 https://www.glca.org/?s=Japan+Study.

日本研究。 2019.「日本研究同窓会ニュースレター」。 https://mailchi.mp/39f1ebda69a8/happy-new-year-from-japan-study.

日本研究。 2021年。「早稲田大学での日本研究」。 https://japanstudy.earlham.edu/.